Lunatic

一番に逃げ出した生徒が伝えてくれたのか、どの教室にも生徒はいなかった。


自分を見て慌てて逃げていく生徒もいる。


勝手に騒がれる自分の容姿が嫌いだったが、咲は初めて、自分が有名人でよかったと思った。


どこに行くか考えながら、階段の手すりにナイフを当てながら階段を降りる。
鉄とナイフが当たる音は、聞いているだけで楽しくなってくる。


一階に降りると、パトカーの音がした。


「……これでゲーム終了なんてつまらないわ」


そして咲は本気で生徒を探し始めた。


外にいる生徒は、もう諦めた。
警察に捕まるには一番早い場所だからだ。


どこにいる。
自分だったら、どこに逃げる。


そうして咲は体育館のドアを開けた。


「見つけた」


そこには数人の生徒が怯えた顔をしていた。


「さあ、遊びましょう」


咲の笑顔に見惚れる者はもういない。
ただ恐ろしく、背筋が凍る。


「遊ぶわけねえだろ！」
「死にたくない！」
「来ないで！」


泣き叫ぶ生徒に向かって一歩踏み出した瞬間、遅れて入ってきた千葉と野田が咲を引き止めた。
千葉が右腕に、野田が左腕にしがみついている。


それを見た生徒たちは、別の出入り口から出ていく。


また邪魔されてしまった咲は、自然とナイフを持つ手に力が入った。