ボーダーライン。Neo【中】


 《 11月3日

 今日やっと引越しが済んだ。届いた荷物を開けて、片付けるのに半日はかかった。

 あれから直ぐに実家に帰ったから、檜とは会っていない。何回も何回も電話が鳴るけど、もう、会うつもりもないから取れない。

 引越しだって、業者さんに全部お任せしたから逃げるみたいに、実家に帰ってきた。

 マンションの合鍵を渡したままになっちゃったのは、失敗だった。合鍵を一つ無くしてしまったと管理人さんに言って、鍵を取り替えて貰わないといけなくなったから、予想以上にお金がかかってしまった。

 学校を辞める事になった経緯を、正直にお母さんに話すと思った通り呆れ果てていた。

 大きくため息をついて、またガッカリさせたみたい。こんな娘でごめんね。

 ろくに結婚相手も見つけられなくて、不甲斐ない娘だって思ってるよね。

 でもね。檜は、あたしが理想としてあげた結婚相手には、うんとかけ離れていたかもしれないけど。本気で好きだったの。

 学生の頃から何度も恋はしてきたけど、檜に対する気持ちだけは他の恋と違って別物だった。

 それだけは自信持って言える。あんなに好きにならなければ、あたしは生徒と付き合ったりしなかった。

 最後に見たのが、好きな人の泣き顔なんて。あたしはやっぱり最悪だ。

 この日記ももう付けるのはやめよう。しばらくは読み返す事もない。

 箱に閉まっておいて、いつか幸せな結婚が出来た時。また読み返す事が出来ればいい。

 来年の春には、きっとテレビで彼の姿を見るかもしれないから。それまでに気持ちを落ち着ければいい 》


 *


 まだ残しておいてくれた実家の自室で、あたしは泣きながら文字を書き綴っていた。

 檜と付き合う前、二人で撮ったツーショット写真を暫し見つめてからページに挟み、そっとノートを閉じた。


 ***


ボーダーライン。Neo【下】に続きます。