あと少しだと思っていた。
あと数ヶ月隠し通せたら、と毎日卒業までの日数を数え、それで全てがうまく進むと思っていた。
でも現実はそうじゃない。
芸能人になるあなたを、あたしはやっぱり受け入れられない。
あたしだけのあなたじゃないなんて、そんなの耐えられない。
自分本位な考えを押し通し、あたしは静かに背を向けた。
職員用玄関を目指して歩いて行くが、再び呼び止められる事は無かった。
校内に入る間際、ちらっと後ろを振り返り、見た事を後悔した。
檜はその場に膝を付き、泣き崩れていた。
ーー檜、ごめんなさい。
唇が震え、目の端からはまた涙が溢れ出る。
ひっそりと物陰に隠れ、あたしは壁に背中を預けてズルズルとしゃがみ込んだ。
そのまま声を殺し、さめざめと泣いた。
吐き出したいような自己嫌悪を胸に押し込めて、それでもこれで良かったんだと何度も自分に言い聞かせた。
あたしはその日、一方的に別れを告げた。
心とは裏腹に、たった十ヶ月の交際を自らの意思で終わらせた。



