「あなたと一緒だと、あたしは幸せになれないの」
「え?」
「……さっき檜が言ったように、あたし達のした事は間違ってないって。周りを強く言い聞かせても、世間はそうは見てくれない」
「で、でも。そんなのっ。ふたりで学校を辞めてしまえば、関係なくなるんじゃ」
「あたしが教師をしてたって過去はっ。誰にも書き換えられないものっ!」
あたしはやっぱり卑怯だ。
これは檜のため、あなたのためだと言い聞かせて、自分の我儘を優先していた。
どんなに好きだと想っていても、きっとこの先の未来で。
あたしはあなたの隣りに並べなくなる。
意を決して振り返り、今まで意識的に作ってきた教師の顔で檜に告げた。
「だから。あたしの事は、もう忘れて下さい」
「……っ!!」
「こんな形で裏切る事を、許してなんて言わない……っ。だけど」
「……」
「……もう。疲れたの」
驚愕から檜は言葉を失っていた。茶色の瞳は、信じられないものを見たかのように揺らめいていた。



