あたしは握り締めた手を胸に当て、すぐ側の扉から逃げるように外へと飛び出した。
「幸子っ!?」
背後から呼び止められるが、懸命に足を走らせ、昇降口付近まで駆けた。
「幸子っ、待てよ!」
あたしは彼の声に応えるよう、ピタリと足を止めた。でも直ぐには振り返れない。
泣き顔を見られたら、きっと檜の事だ。そのまま抱き締めるに違いない。
抱き締められたら、あたしは流されてしまう。
ギュッと拳を握りしめ、嗚咽が漏れそうなのを懸命に耐えた。
ーー今ここで。言わなくちゃいけない。
昨日はもう何もかもに嫌気がさして、後ろ向きになっていたけど、今朝はまだ迷いが有った。
どうにか打開できるかもしれないと小さな希望すら持っていた。
でも、あたしは言わなくちゃいけない。
自分の我儘だけを優先するみたいだけど、さっきの状況で上河さんの意見も少しは理解できたから。
「幸子……」
すぐ側で、檜があたしを呼んだ。
あたしは震える唇を手で押さえ、振り絞るように声を出した。
「あなたと……」
言ってからまた呼吸を整える。



