ーーこれが檜の影響力なんだ。
生まれながらに人を惹きつける力を持っている。
ーー「檜くんは将来、必ずビッグになります」
記憶の中で上河さんの声が聞こえた。
ーー「だからそんな彼に、“教師と付き合ってる事実”があるのは、今後大きなマイナスになるんです」
そうだよね。その言葉の重みが今やっと理解できたよ。
グニャリと歪む体育館の床を見つめ、あたしは静かに洟をすすった。
「さっき校長先生が言ってた処分だけど。桜庭先生が今回、退職すると言うなら、俺も一緒に学校を辞めます。
先生だけが一方的に罪を被るなんて、そんなのおかしい」
ーー駄目だよ、檜。ちゃんと高校は卒業しないと。
檜の側に立つ校長先生は困惑して髪を撫でつけた。すぐ側まで上がって来た教頭先生に目配せし、どうしようと顔を歪めている。
再びざわついた館内では様々な意見が飛び交っていた。
頬を伝う涙を拭い、あたしは唇を噛んだ。
ふと壇上の檜に目を向けると、バチッと視線がぶつかった。
プライベートの顔つきで、さ、と声を上げそうになる彼に、不意に居たたまれなさを感じた。



