ーー檜なんて。あたしに内緒で上河さんと会ってた癖に。
「アハハハハッ! フラれてやんのー!!」
瞬時に何処かから声が上がり、ドッと笑いが巻き起こる。
「桜庭先生、ちょっと!」
昇降口と反対側の廊下から、パタパタと誰かが駆けて来た。
声を潜めて近付いて来るのは、教頭先生と同僚の田崎先生だ。
二人に呼ばれ、あたしは騒ぎの中で呆然と立つ檜へ背を向けた。
「……申し訳ありませんでしたっ!」
校長室に入るなり、平謝りで頭を下げた。あれから色々と事情を聞かされ、檜との交際疑惑について問われている。
問題の写真は、掲示板のものだけじゃなく、紙飛行機にして屋上から沢山飛ばされていたらしい。
飛ばしていた生徒は一年生の桃井さんという女の子で、動機は噂が嘘じゃないという事を証明したかったと聞かされた。
学校祭の後、あたしと檜が空き教室で抱き合っていたという噂の発端は彼女だった。
「……では。桜庭先生は、まさかあれが全て事実だ、と。そう認めるんですか?」
幾らか貫禄を備えた校長先生は、父と同じぐらいの歳で、困った様子で髪を撫でつけた。
眼鏡の奥に眉をひそめ、今後の対処法について頭を抱えている。
事なかれ主義の管理職としては、否定的な意見を望んでいるはずだ。



