怪我したくねぇだろ。
それか本当に警察に突き出されたいのか。

と、伝えるように眉を寄せて睨む。



「っ…!!」



あまり喧嘩はしたくなかった。

今まではこんな身体が嫌で嫌で仕方なくて、その腹いせに無意味な喧嘩ばかりして。

そうやって生きていたら、いつの間にか周りから避けられるようになってしまって。


強い、なんて噂が流れて。

湊川で頂点なんて言われて。



「…いいから消えろっつってんだろ」


「…っ、覚えてろよっ!!」



再び静寂が包むと、地面にペタリと座り込むそいつはホッと息を吐いた。

しゃがんで手を伸ばそうとすると、細い身体が微かに震えていることに気づいて。


女みたいだ…。

こいつを見ていると、そんなことをしょっちゅう思う。



「…もう行った。立てよ」


「う、うん……、ありがとう先輩、」



指も細くて手も小さい。
肌も白い、睫毛も長い。

声だって低くないし、背も小さい。



「…お前、実は女だったりしねぇよな」


「そっ、そんなわけないですよ!俺は男ですっ!!」


「冗談に決まってんだろ」



動揺しすぎだろ。
だからナメられるんだ。

でも、何か隠してるような気がする。


まぁそれは、俺も同じだろうけど。