「…お金なんて持ってないですよ、」


「ならそのバッグ貸してくんない?確かめてやるから」


「や、やめろよっ…!」



小鳥遊 青葉、だったか。


こいつの名前を知ったのは最近だった。

転校生としか認識がなかったし、そこまで気にもしてなかった。


小鳥みたいにピーピーうるせぇ奴だから、“小鳥遊”って苗字はピッタリだと思うと改めて笑える。



「おいおい、でけぇ声出すなよ」


「サツが来たらどうしてくれんだ」



ひとりの男は、小鳥遊の腕を掴んで容赦なく地面に叩きつけた。



「うっ…!」



軽い身体がドサッと倒れてしまうと、自然と俺の足は向かった。


こいつはもっと鍛えたほうがいい。

最初も思ったが、戦えねぇなら手は出すなよ。下手に絡むんじゃねぇよアホ。


馬鹿みたいな正義感だけでつっ走るタイプだ。

それで誰かに助けられるタイプ。



「やめろ」



これ以上はするなと、俺は男の腕を掴んで力を加える。

ギリッと音が出るくらいに握れば、だんだんと顔が歪んでいった。



「は、離せよっ!」


「なら大人しく失せるか」


「うるせぇっ!やんのか!?」