「これで月曜日の体育祭、ゴール決めれるかなあ~」



明るい表情、屈託なく笑う目元。


───…やっぱり、似ている。


小さい頃の記憶のなかにある、少女に。
俺が大嫌いな女に。

だからこそ、こいつの顔を初めて見たときは虫酸が走った。

だけどまぁ、勘違いだろうと。


そもそもこいつは男だ。



「ドリブルもできねぇだろお前。どうせすぐボール取られる」


「え、なら教えてくださいよドリブル!」


「やだよ面倒くせぇ」



双子の妹……だっけか。


もしそれが本当に想像している女だとしたら、たぶん俺はこいつのことすら恨んでしまうんだろう。

だからあまり関わりたくなかったってのに、こいつはウザいほどに絡んでくる。



「ねえねえ僕たち、こーんなとこで何してんのー?」


「ちょっとでいいからさぁ、お兄さんたちにお金貸してくれないかなあ?」



そろそろ帰るか、なんて思っていた矢先。


髭を生やしたタンクトップ姿、煙草を咥えながらニヤニヤ笑う男ふたりが俺たちを囲むように立った。


見る限り湊川の生徒じゃないし、そもそも高校生じゃない。

田舎のコンビニに屯ってるようなチンピラ。