思い出していたのは、アッキーだけじゃなかった。

私に騙されてカラオケに来て、横腹を肘でつついてきて。

その人も同じように膝に女を乗せているから、それが嫌で嫌で仕方なかった。


───先輩。

私、今は女の子なんです。



「ほんとうに、しない…?」


「しない、するわけない。考えることすらしないよ」


「ほんと?」



疑ってはいないけど、彼の珍しい顔をもっと見たくて試してみた。



「……ごめん青葉ちゃん。ちゅーしていい?」


「…嫌って言ったら?」


「……我慢する」



やっぱり彼氏としてのかつての友達には、まだ少し慣れない。

私も、彼の前では女としての私にはまだ慣れない。


でもきっと、いつの間にかそんなものも普通になる日がくるんだろう。



「…ごめんやっぱ無理」


「ん…っ!」



あのときの私に埋め込まれたキスを消すみたいに。

秋斗くんなりに、アッキーなりに謝ってくれてるみたいだった。



「…ねぇ青葉ちゃん。ホテル行かない?」


「…ホ、テル…?」


「好きな子とならいいんだよね?でもさすがにこんなところではできないからさ」


「っ、カラオケに来たのっ!歌うの…!」