「検診に来てください」と、病院からの電話も。

「藤城先輩」と、有沢 夏実からの電話も。


俺はすべてを拒絶するように応えなかった。



「おかえり理久。おばあちゃんこのあと少し出るけど、夕飯ちゃんと食べるのよ」


「ばあちゃん、あまり無理すんなよ。俺なら大丈夫だから」


「ありがとうね。でもあなたはそういうことを気にしなくていいの。おばあちゃんならまだまだ元気よ?」



家に帰れば祖母が1人、台所に立っている。


俺が父親とその再婚相手である廣瀬の実の母に捨てられてから、ずっと育ててくれた人。

そんな背中が1日1日小さく見えて、いつかこの人も消えてしまうんじゃないかと思うと、怖くてたまらなかった。



「…なぁ、ばあちゃん。俺はいつか1人になるのかな」



台所のテーブルに置いてある、たくさんの薬。

俺が毎日飲むものよりも多い。



「そんなこと、おばあちゃんがさせないわ。…大学のお金なら心配しないで」


「俺、辞めるよ大学。…卒業したら働く」


「なに言ってるの。医学部、このままだと受かりそうなんでしょう?そんなに簡単に夢を諦めちゃ駄目よ」



夢なんて大層なものじゃない。