キミの世界で一番嫌いな人。





いま目の前にいるのはアッキーだ。


藤城 理久じゃなくて、廣瀬 秋斗。


ずっと友達として関わってきた人。
チビって、そう呼ばれつづけて。

体育祭も修学旅行も文化祭も、いつも一緒に隣にいてくれて。


そんな私の親友が。



「───…青葉ちゃん。」



そう言う、その人が。



『───…あおば、』



聞いたことないくらい弱々しい声で、怒りと哀しみのなかで呼んでくれた彼と一瞬重なってしまった。

それでもまったくの、別人だ。



「青葉ちゃん。…すっごいかわいい」


「っ…、なっ、かわいいって、なんで……、アッキー、」


「俺はもうアッキーじゃない」



唇はゆっくり離れて。

意識がくらくらするなか、ぎゅうっと抱きしめられる。



「…もうトモダチじゃないよ?わかる?」


「う、うん…、でも、」


「大丈夫、わかってるから。伊達にお前のトモダチやってたわけじゃない」



コツンとおでこがくっ付けば、優しい顔をして微笑んでくれる。


なんて呼べばいいのかな…。
アッキーって呼ぶのはトモダチの特権だから。

……秋斗くん、かなあ。



「俺のこと、必ず好きにさせるよ」



───先輩。

今、どこにいるんですか…?
今、あなたは誰といるんですか…?


私のことは、ちゃんと忘れてくれましたか…?