キミの世界で一番嫌いな人。

理久side




雨が、痛い。
それは全身を刺すような棘に思えた。

せっかくシャワー浴びたってのに、着替えたってのに。


こんなの……無意味だ。



「先輩…っ、待ってください…っ!!」



ぜんぶ無駄だったんだ。

俺はやっぱり金で心臓を買われただけだった。

あの男はそこに何ひとつ情など持ってない。


上手い具合に釣れた馬鹿な家族としか思っていなかったんだ。


そんなこと、わかってた。

俺はただ苦しみを移すための、都合の良い容れ物でしかなかったってこと。



「先輩っ、騙すつもりじゃなかったんです…っ!ただ俺は…!!」


「“俺”?…笑わせんなよ、小鳥遊 青葉」


「っ…、」



雨が、うるさい。

その音が俺の脳内をもっとぐちゃぐちゃにしやがる。


黙れ、もう俺に近寄るな。



「お前はずっと俺を…嗤ってたんだろ……、親子揃って虫酸が走るんだよ」


「違うんです…っ、せんぱ───」


「違くねぇだろ!!ぁ”あ“!?」


「っ…!」



お前を見るとあの男がちらつくんだよ。

お前を見ると、俺の心臓が痛くなる。