終わってしまった、崩れてしまった。
そんな単純な説明がしっくりくる。
「…お前は、一体……誰なんだよ…、」
ずっと信じてくれていた。
女だと噂が立てられたときも。
気にせず、私を守ってくれた。
本当はいつも罪悪感を感じていた。
いつか話さなきゃいけないときが来るって。
だけどそれは、こんな形にする予定なんか更々なかった。
「わ、わたし、は……」
いつか先輩が先輩を赦せたとき。
先輩が私を赦せたとき、私が私を赦せたとき。
そんなときがいつかずっとずっと先で来たなら、そのとき隠さずすべてを話そうって。
───そんなの、馬鹿みたい。
ただ逃げていただけなのに。
今の現状に優しくしてくれる先輩に甘えていただけ。
自分がいちばんラクな道を選んでいただけ。
「俺は今、かなり冷静な判断ができない状態だ。ちがうって……言えよ、」
パサッ───。
長く垂れ下がったウィッグを取った。
サラッと揺れる、ショートヘア。
いつも先輩先輩って賑やかに声をかけていた私が、ここにいる。
ちがくないよ、先輩。
最初から違くなんかなかった。



