泣きそうな顔で抱き締めてる廣瀬も、どこか切ない会話をしているこいつらも。
どちらも見ていて腹が立った。
そいつに触っている廣瀬に苛立って、だけど俺が怒る理由なんかどこにも無いから。
「相手は何年?名前は?」
「…たぶん3年生。名前は…わかんない、」
「とりあえず片っ端から殺していけば当たるかな」
「いや駄目だろ殺したら…!」
そんなにも気持ちを表すことができる廣瀬。
なにを言っても泣かせてしまうから、陰で守ることしかできない俺。
「でもありがとアッキー。…先輩も、ありがとう」
ほら、また、またこいつが妹と重なる。
妹…?
声も背もまったく同じ双子なんかありえるか?腕の細さだって変わらない。
変わらないんじゃない───同じなんだ。
「俺、がんばる。男なんだからこんなくらいで負けてちゃ駄目だよなっ」
「…頑張るって、お前は───、…、」
廣瀬はそこまで言いかけて止めた。
その先も気になったが、そもそも根本的な疑問があった。
「なんでこうなった。心当たりはねぇのか。…あの貼り紙もそうだし、急におかしいだろ」
誰があれを貼ったんだ。
いろんなことに違和感が生まれたのは、文化祭が終わってからだった。
廣瀬だってあの妹と距離が近いし、今だってそうだ。



