理久side




「おい、この学校に女が混ざってるんだってよ」


「あれだろ?2年の小鳥遊 青葉」


「なぁ今度脱がせようぜ。一発ヤレるかもしれねぇぞ」



その噂が静まることは、まだ先らしい。

とうとう卑劣な会話さえ出るようになって。


“小鳥遊 青葉”というワードが出れば、俺はすぐに誰だとしても睨みを効かせた。



「っ、藤城…、」


「あいつに近づくな。下手な真似すればどうなっても知らねぇからな」


「や、やめろよ、冗談じゃねぇか…!」


「俺はつまんねぇ冗談が大嫌いなんだよ」



ガッ!と胸ぐらを掴み、クラスメイトである男の腹に一発こぶしを入れた。

ここまでしなければ湊川の生徒を脅すことはできない。


あいつは男に投げられただけで震えるくらいなんだ。

女みたいに細いし小さくて、本当は怖がりのくせに笑ってるような奴だから。



「やめろ…っ、離せっ…!!」



たまたまここに来たのが当たりだった。


俺がいつも向かう屋上は体育館裏の階段を渡ったほうが近いため、人の通らないそんな場所を歩いていたとき。

体育館からか、どこかの物陰から聞き慣れた声がする。