キミの世界で一番嫌いな人。





アッキーの前髪が額にかかった。
ベッと、意地悪に舌を出してくる。

そんなものがどうにも楽しくなってしまって。



「おいっ、やめろって…!はははっ、殺すよ…っ!」


「俺だって優しくないんだよっ!アッキーなんかこうしちゃえば倒せるしっ」



えいっと、脇腹をくすぐる。


俺のトモダチ。俺の親友。

そう思える今が、こんなにも安心できて嬉しいだなんて。



「…へえ、言うようになったねチビ」


「うわっ!あははははっ!やめろよアッキー…!くすぐったいってばっ」


「俺を倒すんじゃなかったの?もうお手上げ?そんなんだと来週からもまた耐えられないよ?」



どんなに私がいじめられたとしても、当たり前のように庇ってくれる。

落ち込んでいたら、「なに泣いてんだよ」って、「おまえは男だろ」って背中を支えてくれる。



『俺は廣瀬 秋斗の友達なんだ』



かつてのそんな嘘が、本当になってしまった。

今は胸を張って言えるよ。


俺は廣瀬 秋斗のたったひとりの親友だ───って。



「わっ!アッキー…!」



トサッ───!


体勢を崩した私に覆い被さるようして重なってくる。

ふわっと、同じ匂いが香った。



「重いよアッキー!俺つぶれちゃうって!」


「…そうだよね、お前は女の子だし」



離してくれたはいいものの、アッキーは覆い被さったまま見下ろしてきた。

修学旅行の日とはまた違う空気感で。


どこか、なにかが違った。