「なのにどこかの熱血馬鹿のおかげで今では戦意喪失。参ったよ本当」
それは藤城サンも、俺も。
こいつはそんな俺たちを繋いでくれてしまうみたいに。
ありえないよ、ほんと。
「…アッキー、」
ソファーからむくっと起き上がると、ベッドに横たわる俺の傍らに近寄ってきた。
そして細い手を俺の髪へと伸ばしてくる。
……突然のことでまったく反応できなかった。
「ありがとうアッキー。そういうのってぜったい話づらいのに話してくれて…、俺すごい嬉しい」
俺、こいつに頭撫でられてる…?
よしよしって言っちゃってるし、おまえ。
というか、“アッキー”なんて。
俺も何を呼ばせてんだって今さら思うけど。
「アッキー、起きれる?」
言われたとおり身体を起こして「なに?」と、つぶやいてみる。
すると今度は抱き締められちゃったみたい。
「…俺、アッキーの寂しさとか辛さとか。ぜんぶは分からないかもしれない……けど、分かりたいって、思うよ」
背中を撫でてくれる温かさが、ずっとずっと忘れていた母親のものに少し似ているような気がした。
『ねぇ母さん、どうして母さんは僕をアッキーって呼ぶの?』
『ええ、だめ?だって秋斗は特別だもの。アッキーって、かわいいじゃない』
『かわいい?ふふっ、僕、…母さんにならそう呼ばれてもいいや』
まさか俺が母さん以外の女にそう呼ばせるなんて、思ってもみなかった。
男なのか女なのか分かんないよ。
俺だってチビをどう見たらいいか、本当はわかってない。



