「……好きって、…言っちゃったんだよ俺」
「は……?」
まさかだった。
え?伝えたの?
お前、それ大丈夫?
てか藤城サンだって今までどおりだったから、まったく知らなかったんだけど。
「“俺”と“私”のふたりぶん伝えちゃったんだ。…もちろん相手にすらされなかったけど」
あはは、暗闇に笑い声が響いた。
いや藤城サンはお前のこと好きでしょ。
女の、お前のこと。
それってある意味なんの問題もないんじゃないの?って思うけど。
たぶんそこまで単純でもないから、こうなってるんだろう。
「夏実ちゃんにバレて、ぜんぶ話せって言われて電話かけて…それでまぁ、そのまま勢いで」
そこまで言うと、チビは寝返りをうった。
どんな顔をしているか見えないけど、ただその背中は小さい。
「他人事のように“兄”として伝えただけで。…それしか、できなかった」
正直、話の流れは分かるようで分からない。
それに分かりたくもなくて。
でも俺はどうしてか、どこか悔しくて。
なんでだろ、すごい悔しい。



