リビングに入ると、忘れ物を探すというよりは立ち止まって静かになってしまった夏実ちゃん。
声をかけようか迷ったけど、私もそのまま同じように黙る。
すると彼女はクルッと向き直った。
「な、夏実さん…?」
思わず後ずさってしまったのは、彼女らしくないほどの形相をしていたから。
これは見まちがいじゃない。
やっぱりさっきもそうだったのだ。
じりじりと私に近づいてきて、
「やっ!やめてください…っ!」
私のウィッグを鷲掴みにして、地面に落とした。
その瞬間、全身の血の気がサァァァと引く。
どうしよう…バレてしまう。
どうにか誤魔化さないと…っ、
「私、見ちゃったんです」
「…え…、」
「文化祭のとき。…男子トイレに入って行くから、おかしいと思って」
終わった───…。
バレるなと、アッキーに言われてたのに。
あのとき先輩とのことにいっぱいいっぱいで、警戒心が薄れてしまっていたんだ。



