あまり家のことの話はしたくなかった。
とくに家族のことは。
だからこそ、先輩がいるのは複雑だった。
父親が滅多に帰らないことだけが救い。
「私、シフォンケーキ作ってきたんです」
パスタを食べ終わったあと、夏実ちゃんはバッグからおやつにぴったりのケーキを取り出した。
うわぁ……、やっぱりすごい。
「あっ、私、紅茶用意してきます!」
「大丈夫です。シフォンケーキにはいつもこれって決めてるので」
キッチンへ向かおうとした足はピタリと止まった。
夏実ちゃんが再びバッグの中から取り出した水筒は、これまたお洒落。
な、なんだこれは……。
「自家製ジンジャーです」
いや、わからん。
言われても全然わからん。
レモンティーとかハーブティーとかならギリギリ私も出せたけれど。
自家製ジンジャーて…。
「す、すごい…、夏実さんが作ったんですか?」
「藤城さん、炭酸が好きって言ってましたよね。お口に合うといいんですが」
えっ、逸らされた。
ナチュラルにシカトされた。
いまぜったい聞こえてたはずなのに。
「妹ちゃん。紅茶ひとつお願い」
「え…?でも夏実さんの自家製ジンジャーが…」
「俺よくわかんない飲み物むり。無難なのがいちばんだよ」
アッキーの一言は、ちょっとだけ私をホッとさせた。



