それにしても、髪長くて鬱陶しい…。

結べばいいんだけど、ウィッグだから結んでしまうと地毛との境目が見えてしまう。

だからずっと下ろしたまんま。


でも取れちゃわないように、前髪には昔使っていたピンを飾り程度に留めた。



「…まだできねぇのかよ」


「ひゃっ…!」



背中から覗き込む声に、咄嗟に出てしまった女の子の声。


ヤバい…抑えなきゃ…。
あ、でも今は女の子だからいいんだっけ。

もうっ!ややこしい!

いつもこうしてわからなくなる。



「藤城サンは大人しく待っててよ。お腹空いて我慢できなくなっちゃった?まったく子供なんだから」


「てめぇらがぎゃあぎゃあやって時間かかってんだよ。…俺にも味見させろ」



そう言うと、私をじっと見つめてくる先輩。



「え、あ…、ちょっと待ってくださいっ」



新しいスプーンを取り出して、クリームをそっとすくって。

スプーンごと彼に渡そうとしたのに…。



「…ど、どうぞ」



どうしてか受け取ってくれない。
私からは嫌なのかな…。

そうだったそうだった、私は嫌われてるんだった。


だったらアッキーにやってもらおうと、アイコンタクト。



「はい、藤城サン。あーん、」



察した友達は私からスプーンを受け取って、からかいつつも先輩へと差し出した。