何が起きたのかわからなかった。
手をつなぐよりも抱きしめるよりも近く感じた温度は、まぼろしだろうか。
───…いや。
塞がれたのは、たしかにくちびるだった。
「…紘菜ちゃんからそんな話ききたくねーよ…」
感情的になっていたのはどちらだろう。
私の言葉を呑み込むように重なった2つの影。
触れるだけの、やさしくて、だけどすこしだけ苦しさを含んだキスだった。
くちびるをはなした三琴先輩と目が合う。
三琴先輩とあの日、ラーメン屋で会ったのがダメだったのだろうか。
どこからやり直せば、私は三琴先輩にこんな顔をさせずに済んだのだろう。
「ごめんね、紘菜ちゃん」
───…ああ。
新しい恋は、始まる前に 夜空に打ちあがる花火とともに散ってしまったみたいだ。
あまりにも不甲斐ない自分がどうしようもなく嫌になって、また泣きたくなった。