人混みをよけ、先輩に連れられるままにたどり着いた、あまり人通りがない場所。
会場になっていた公園の裏側にあたるところだろうか。ベンチがあって、「そこ座ろっか」という先輩に続いて隣に腰を下ろした。
ぱっと離された手が、少しだけ名残惜しかった。
「あの、先輩…」
「ごめん、急に。見るの嫌だったかと思って咄嗟に」
ああ、なるほど。
やっぱり気を使わせていたみたいだ。
三琴先輩は私がまだ翔斗のことを好きだと思っている。
そして私も、心のどこかでそうだと“思っていた”。
「先輩、私、平気みたいです」
私が零した言葉に、三琴先輩は「え?」と視線を移す。
すっかり日が落ちた空のしたで、先輩の綺麗なひとみと目が合った。



