かなしいのか、寂しいのか、それももうよくわからない。
翔斗が新しい彼女に射的をしている姿はやっぱりかっこよくて、私が彼のことを好きだった事実は消えてはくれないんだなぁと思わされる。
けれど、不思議なことに、振られたあの日みたいに心はずきずきと痛んではいなかった。
それなのに、泣きたくなっているのはどうしてだろう。
翔斗だ、彼女だ、しあわせそうだ。
私が感じたのはその程度のもので、翔斗に今何を言われても「お幸せにね」と言える気がしている。それは嘘じゃない。
だけどどうしてか───…無性に、涙が出そうだった。
「せんぱ、っ」
「紘菜ちゃん、こっち」
───突然のことだった。
気にしていないので行きましょう、
そう言おうとしていたはずなのに、声を洩らした時にはすでに私の右手は三琴先輩の大きな手に包まれていて、先輩は屋台通りを抜け出すように脇道にそれた。
理解が追い付かない状態で、意識は握られた手にばかり向いてしまう。
大きく音を立てた心臓は……素直すぎて、きらいだ。



