「あーーーーーー、くっそ…、」
そんな声が耳に届いたのは、もう10分目のお腹の中に無理やり餃子を放り込んだ時だった。
「全然足んねー、」
「食べすぎだって。お前いつもバカみたいに食って次の日腹壊すじゃん」
「だれがバカだ」
「お前だよ。振られてやけ食い、だせーからやめろって」
「うっせー、…わかってるっつーの」
比較的空いている店内で、3つ隣のカウンター席から聞こえた話を聞き取るには十分な声量。
'振られてやけ食い'というワードにつられ、ちらりと視線を向ける────と。
バチ。目が合ってしまった。
黒髪で、翔斗より軽めのマッシュヘアー。
切れ長の目に通った鼻筋。
耳には、ピアスが1つ、きらりと輝いていた。
よく見ると同じ学校の制服を着ている。
「…え。ミコト先輩、じゃん」
隣で嫌々チャーハンを食べていたエナちゃんがそういうと、その名前に反応した黒髪の彼が「え?」と声を零した。



