私が可愛くしたところで三琴先輩の“いちばん”かわいいはもらえない。


私は所詮当て馬にしかなりえない。
だれのヒロインにもなれない。



だから私は、泣いてしまう前に───三琴先輩との間に線を引くことにした。




エナちゃんに流されるままに三琴先輩への興味を“恋”とよばなくて良かったと、すこしだけほっとしている。




振られたくない。傷つきたくない。


春先輩が逃げたのをずるいという反面、私だって同じくらいずるくて弱いんだ。




失恋の痛みはもうたくさん知っている。
こんなに短期間で2度目は要らない。



浴衣はまた別に機会に着ることにしよう。



エナちゃんにはまだなにも話していないけれど、事情を話せば別の地域の花火大会に一緒に行ってくれるような気もする。

「人込み嫌いだから30分で帰るけどね」とか言われるかもしれないけど。





「行きましょう、先輩」

「だねー」





……私が春先輩だったら。


そしたら三琴先輩は甚平か浴衣を着てきてくれたのかなぁ…なんて叶いもしないことを頭の片隅で思いながら、私は三琴先輩の半歩後ろを歩いた。