翔斗に振られてから、お母さんはずっと私が元気がないと思っていたのか、私の大好物の酢豚が、夕飯の献立に頻繁に選ばれるようになった。
朝起きて寝起きの顔に「かわいいから大丈夫」と言ってくるのももはや日課になりつつあって、お母さんの優しさには十分助けられていたのだ。
お母さんとは普段から日常的に友達の感覚で話をするので、「花火大会、仲良くなった先輩と行くことになった」といったときはすごくうれしそうにしてくれたんだ。
「せっかく買った浴衣なのにいいの?」「ママが髪の毛かわいくしてあげるのに」といわれ、私は「大丈夫、ごめんね」と返すことしかできなかった。
私も新しい浴衣、着たかった。
着る勇気が欲しかった。
先日、コンビニでばったり春先輩と会った日に知った本音。
春先輩は三琴先輩のことがすきじゃなくなったからわかれを切り出したのではなく、好きだからこそ別れを切り出したこと。
三琴先輩は言わずもがな春先輩のことが好きで、2人が近いうちに再びくっつく可能性は大だ。
その事実に、私はとことんぶちのめされてしまった。