「紘菜ちゃん私服なんだ」 「あー…、はは。でも三琴先輩もじゃないですか」 「そうだけど、…紘菜ちゃんの浴衣、少し期待してたから。見て見たかったなって」 三琴先輩はずるい。 先輩の潜在的な優しさなのかもしれないけれど、私にとってはぜんぜん優しさに値しないというのに。 残念そうに眉を下げた先輩に、「こっちのほうがうごきやすいので!」といつも通りのトーンでいう。 つい数分前のおかあさんも同じような顔をしていた。