「うー……」
バリアフリーのトイレに駆け込んで、ドアに寄りかかるようにしゃがみ込む。
三琴先輩は春先輩のことが好きで、今もきっと忘れられずにいる。春先輩が素直になれば、2人がよりを戻す可能性は高くなるだろう。
先輩には幸せになってほしい。
あんなに良い人なんだ。
本来振られるべき人でもなかった。
ちゃんと話をして、また一から恋をしたらきっとうまくいくだろう。
わかっている、分かっていた。
だから───…私が悔しがるのは、おかしな話だ。
――紘菜ちゃんはヒロインになれるよ、俺が保証する
前に三琴先輩に言われたことばが頭の中をまわっている。
私はこんなんで、本当にヒロインになれるのだろうか。
翔斗のヒロインにはなれなかった。
そんな私が、いつかだれかの───…三琴先輩にとってのヒロインに、なんて。
(…なれるわけないじゃん、馬鹿らし……)
私がながした涙は、あまりにも無意味だ。