エナちゃんは実は歌うのがあまりうまくない。



彼女が音痴だと知っているのは友達の中で私くらいだと、随分と前にエナちゃんが教えてくれた。


私に教えてくれたのは、「もしこの先、同窓会や大勢での集まりでカラオケに行くことになったらどうにかして私からマイクを遠ざけてほしいから」らしい。




ある意味利用されているけれど、エナちゃんの秘密を知っているのが私だけだという事実も素直に嬉しかった。





私は彼女のことを信頼しているし、彼女も私のことを頼ってくれている。

だから、こうやって今も良好な関係を築けているんだなぁ、と時々噛みしめて嬉しくなるのだった。




ちなみに、エナちゃんのバイト先は、私がはたらくコンビニから歩いて5分の所にあるカラオケ店。



音痴なエナちゃんがカラオケ店をバイト先に選んだ理由は、従業員割引がきくかららしい。


時々一人カラオケに行って音痴をなおそうとしているとかで、その話を聞いた時はさすがに笑ってしまった。




エナちゃんは、血も涙も微量。


だけど、かわいいところもけっこうある。