翔斗と完全にさよならをしたことの悲しさよりも、先輩が私のために怒ってくれたことの嬉しさが勝っている。



三琴先輩と知り合えてよかった。

一緒に美味しいものを食べることができて良かった。





───俺の意思で紘菜ちゃんのこと知りたいって思ったんだよ




私も、三琴先輩のこと、もっと知りたいです。





「…また、一緒に甘いの食べに行ってくれますか」

「ふ、うん。行こう」

「…かき氷とか」

「夏だしいいかもね」

「、また、連絡してもいいですか」

「ん、いいよ。俺もするよ、毎日暇だし」





恋でできた傷は、恋でしか癒せない、異性でしか埋められないことがある、となにかの本で読んだ。



翔斗でできた傷をいやしてくれるのが三琴先輩であったらいいな。

ぽっかり空いた穴が三琴先輩の優しさで溢れたらいいな。





そんなことを思うのは、夏休み前の夕暮れ時のこと。

好き“だった”人のために流した涙は、すっかり渇いていた。