ぐさり。
昨日の今日で、彼の口から“幼馴染”というワードを聞くのは苦しい。
いくら視界に入れないようにしていたって声は聞こえてきてしまうのは仕方のないこと。
けれど、大好きだった彼の声で放たれる言葉のなかに、私を幸せにしてくれるものはひとつもない。
「…おまえ、春がいんだろ。紘菜にちょっかいかけんのやめろよ」
「あー、別れたけど」
「…はあ?」
「別れたから彼女いないよ、今」
春先輩と別れたことは、3年生の中でまだ浸透はしていないみたいだ。昨日の今日だしそれもそうか、とすぐに納得する。
おそるおそる顔を上げると、ばち、と翔斗と目が合った。
「逆におまえは彼女できたらしいね、おめでと」
「なんでそれ、」
「紘菜ちゃんから聞いた」
三琴先輩の言葉に、翔斗が気まずそうに私から目を逸らす。
そんなあからさまに傷ついた顔しないでほしい。
泣きたいのはこっちだと、昨日からもう100回は思った。



