ずるいよ先輩、甘すぎます









「紘菜ちゃん歩き?」




お店を出てすぐ、三琴先輩がそう聞いてきた。

「送ってくよ」と付け足され、「え」と声を洩らす。





7月も後半に差し掛かっている。

夕方といえど、空はまだまだ明るいのだ。ここからさほど遠いところにあるわけでもないし、一人でも平気だ。



その旨を伝えると、三琴先輩はへらりと笑って「なんで?」と言った。


なんでって…何故だ。





「俺も男だし。女の子をひとりで帰らせることしないよ」



この優しさが、春先輩と付き合っていた時は彼女にだけ向けていたものだということはなんとなくわかる。



けれど、別れた今、その優しさは不特定多数の女の子にむけられてしまうのだろうか。加えてミスタコンに出るほどの整った顔だ。


このイケメンの優しさに触れたら、きっとだれしもが好きになってしまうではないか。三琴先輩のことを好きな人なんて軽く10人は居る気がする。



次こそは、三琴先輩のことを大事にしてくれる人と出会ってほしい。


春先輩との記憶を上書きしてくれる素敵な人と恋をしてほしい。