私と翔斗の思い出の話を、三琴先輩はたくさん頷きながら聞いてくれた。
偶然にも、三琴先輩は翔斗と同じクラスらしい。
“転校生”の彼女といえば、思い当たる節があったのか、「ああ…」と納得したように相槌を打った。
「…でももう忘れます」
「ん。俺もわすれる」
「がんばりましょうね」
「だなー、ホント」
そういって笑いあって、テーブルの上の糖分をすべて平らげてカフェを出た。
お会計の時、自分の分のお金を払おうとしたら、「誘ったの俺だからいいよ」と受け取ってはくれず、三琴先輩がまとめて支払いをしてくれた。
三琴先輩は、ちゃんと"先輩"って感じがする。
翔斗と同い年なのに、翔斗よりもずっと大人びて見えるのはどうしてなのだろう。
三琴先輩だって私と同じように振られて辛いはずなのに、そう感じさせないくらい、私の心をいたわってくれる。
スマートで、優しくて、良いヒト。
春先輩、こんなに良い人を振ってしまうなんて、───…本当にもったいない。



