…もう行ったかな。
目が合わなければいいんだけど…と、そんなことを思いながら再び顔をあげる───と。
「紘菜ちゃん」
「ぎゃあ!」
思わず大きな声が出た。「声でか」と言いながら三琴先輩が肩を揺らしながら笑っている。
笑い事じゃないし…心臓飛び出るかと思った。
「おまたせ」
「…いえ」
「紘菜ちゃんちょっと不機嫌になってる?」
「どっきりは嫌いです」
「ええ、どっきりのつもりは全然なかった」
「ごめんね」ともう一度謝った三琴先輩がくしゃりと頭を撫でる。
優しい手つきに、ぎゅっと胸が締め付けられた。
まるでお兄ちゃんみたいだ。



