言われるままに出した手の上に、フルーツ飴が2つのせられる。もも味とぶどう味だった。
「エナちゃんにも1個あげてね」
「せんぱ、」
「やべ、時間!じゃあ、今度こそまた放課後!」
そう言ってパタパタと走っていってしまった先輩。エナちゃんが、「あれ体育絶対遅刻だよね」と言うので思わず笑ってしまった。
「私らも戻ろ」
「うん。エナちゃん、桃とぶどうどっちがいい?」
「あ、私は要らない。同盟結んだから」
「同盟?何の話?」
「こっちの話」
「よくわかんないね」
「そのうち分かるんじゃない?」
「ふうん……」
エナちゃんって時々意味深なことを言う。全然理解できないので 深入りはしない事にしている。
貰った桃味の飴を口の中にほおり込み、もう1つはポケットに入れる。
午後の授業はあと2つ。
パフェとパンケーキ、楽しみにしていよう。
口の中に広がる桃の甘さは、なんとなく本当に失恋の傷に効いている気がした。



