去年の花火の記憶はあまり無い───というより、三琴先輩からのにがいキスに全て呑み込まれてしまったという方が正しいだろう。
始まる前に私の恋は終わってしまったんだ、私はどこからやり直したら良かったんだろうと、自分の不甲斐なさを実感して苦しかった。
三琴先輩の隣で笑える未来はもうないと、本当にそう思っていたのだ。
けれど今はそうじゃない。
私は先輩の彼女で、先輩は私の彼氏。
何も気にせず三琴先輩のことを好きだと言えるし、隣にいることが出来る。
「、行きましょう先輩」
「ん、だね」
照れくさい空気に耐え難くなり そう持ちかける。
「すげー楽しみ」
「ですね」
「林檎飴食べたい」
「買いましょう」
「あとあれも、チョコバナナ」
「先輩甘いの食べてばっかりですね」
「何歳になっても、好きなもんは好きなんだよなぁ」
どちらともなく繋がれた手に、また愛おしさが溢れた。
fin.
2021.01.08
最後までお付き合いくださりありがとうございました!



