「紘菜ちゃん」




名前を呼ばれ振り返る。そこに居た人物と目が合って、愛おしさで胸がきゅうっと鳴った。




「ごめんね、待たせちゃってたね」

「……先輩、まだ待ち合わせの30分前ですよ。私が早く来過ぎてしまっただけなのに…どうしたんですか」





時刻は16時30分。


三琴先輩との待ち合わせ時刻は17時の予定で、楽しみすぎて早く家を出過ぎてしまったな…と反省してわずか2分が経った頃のことだった。




「や、楽しみすぎて早く家出ちゃった」

「…、そ、ですか」



先輩も同じことを考えてくれていたと知り言葉を詰まらせる。


付き合ってから1年近く立つけれど、三琴先輩から真っ直ぐな言葉を受け取るのは、いつになっても慣れないまま。



「浴衣だ」

「…あ、今年は着ようって決めてたので、……先輩も甚平ですね」

「…まあ、今年は着ようって決めてたから」

「……おそろいだ」

「ふ、だね」





8月中旬​────今日は花火大会である。