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「いらっしゃいませー」
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「…あ、肉まんひとつ」
「ういーす……て、あれ、ライバルさんだ」
「は?」
「あ、いや。俺の友達…、いや、バイト仲間のライバルさんだなと思って」
「……あ、ここ…あの子のバイト先か」
「元気ないっすね」
「…きみ、なにか事情をきいてるの?」
「んー、や、なんもっす。ライバルってことだけ」
「…そう。でももう、ライバルはおしまい。私は脇役だから」
「知ってます?」
「なに?」
「この世に脇役っていないんですよ。みんな主人公で、ヒロインで、ヒーローです」
「…見かけのわりに良いこというのね、きみ」
「あざっす。肉まん、130円です。あ、ちょうどですね。レシートいります?」
「いらないです。…どうもありがとう」
「……あー、まってまって」
「え?」
「俺、あと5分であがるんで、店内でまっててくれませんか」
「…、どうして?」
「冬の肉まん、誰かとはんぶんこした方がおいしいって知ってます?」
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