「紘菜ちゃん」 やさしい声で名前を呼ばれた。 先輩のつめたい指先が、私の髪の毛をそっと耳にかける。指先がかすめた頬は、きっと今日も熱いだろう。 「春とは、ちゃんと終わりにした。って、もともと俺、紘菜ちゃんのこと好きになってからはもうずっと紘菜ちゃんのことしか考えてなかったんだけど。春とちゃんと話せてよかったって思うよ」 「…っはい、」 「紘菜ちゃんが春に言ってくれたんだよね?春が『ありがとう』って伝えてって言われた」