ずるいよ先輩、甘すぎます








外を選んだのは私の意思だ。

肌寒いことを承知で、秋の澄んだ空気に囲まれてひとりで心を落ち着かせたかった。



……あと、軽音楽部のパフォーマンスを見に行かなかったのは、エナちゃんも三琴先輩もいない中で大勢に囲まれてバンド演奏を見て盛り上がれる自信がなかったから。




「……先輩、どうして私がここにいるって分かったんですか?」



「よいしょ」なんて可愛いことを言いながら私の隣に座った三琴先輩そう問う。




私がいるこの場所はグラウンドの端っこだ。


このベンチからは体育館の入り口はかろうじて見えるけれど、体育館側からは木の陰で死角になっているので、私がここに居るなんて分かるはずもない。