夏休み前の放課後。
その日、私は下校途中に学校にスマホを忘れたことを思いだして、取りに戻ったのだった。
私はいつもホームルームが終わるとすぐに教室を出るので、放課後の教室の様子などは、この時まで何も知らなかった。
静けさに包まれた廊下を渡ると、教室に近づくにつれて誰かがはしている声が聞こえた。
だれか残って話しているのかもしれない。
うちの学校は部活に入ることが強制ではないので、私が知らないだけで、放課後に残って話をしている人は多いのかもしれないな……と、そんなことをおもいながらドアを開けようとしたとき。
「ぶっちゃけ、このクラスで狙ってる女子いる?」
そんな声がきこえ、反射的にドアを開けようとしていた手を止めた。
マンガや小説でよくある展開だ。
あれは現実的にちゃんと起こりうるものなのだと、この時初めて知った。



