自分が『高嶺の花』と呼ばれる器じゃないことなんて、自分が一番よく知っていた。 私は一目ばかりを気にするくだらない人間で、恋も友情もそれほど知らない。 本当の自分がこれまでどんなふうに人に触れていたかも、もはや思いだせない。 クールだの楚々だのと言われる私は、ぜんぶ造りものなのに。 見てもらえているのはこの顔のおかげ。 この顔がなかったら、私は何者にもなれない。 そう、思っていた。 ───あの日、きみがあの言葉をくれるまでは。