あー…行っちゃった。
小さい時からずっと見てきた大好きな背中。
手を伸ばせば簡単に触れられる距離に居た彼は、今から 私ではない女の子のものになるらしい。
『ごめん 紘菜』
なにがごめんだ。
虚しいしむかつくし殺意しか湧かないから謝らないでほしい。
そしてなんできみが切なそうな顔するんだ。
泣きたいのはどう考えても私のほうなのに。
彼の世界では'あの子'がヒロインだった。
彼らの物語は無事ハッピーエンドを迎えることになる。
付き合い始めたところからまた新たな章が始まるんだよね。
彼らの物語における私は単なる脇役――しかも当て馬だ。