三琴先輩はあの日から気持ちに嘘をつかなくなった。傷つけるような内容でない限り、思ったことをちゃんと口にしてくれる。
不安になる暇もないくらい、先輩のまっすぐな思いが届くのだ。
前に、先輩は「独占欲が強い自分に気づいた」と言っていた。
それのなにがいけないことなのだろう。
どこに謝るポイントがあったのだろう。
好きな人に、彼氏に、独占されて嫌な人がいるのだろうか。
むしろ嬉しいばかりだ。
三琴先輩の彼女は私なんだって、彼からの愛を貰うたびに実感する。
「…もっと独占していいです」
「あーもー…そういうのだめって言ったじゃん」
「、…じ、事実です」
「紘菜ちゃん、けっこう悪い女だよね」
「…上等ですよ」
先輩の気持ちを揺さぶれるなら悪い女も上等だ。
「よし。紘菜ちゃんどこから見たい?」
「料理部のスコーン食べたいです。あとB組の巨大迷路も」
「いいね、行こう」
文化祭1日目は、そんな感じで平和にすごすことができた。



