ずるいよ先輩、甘すぎます








「───…、え?」




───先輩が目を覚ましたのは、くちびるを離そうとしたときのことだった。




ばち、と絡み合った視線。

驚いたように瞬きをする三琴先輩に、私は、自分の頬がどんどん紅潮していくのをたしかに感じていた。


あれ、私、今なにをして───…





「……寝込みを襲うのはよくねーよ…?」

「っ、あ、ご、ごめんなさい…っ!」





三琴先輩の言葉に、咄嗟に身体を離して距離を取る。

あまりにも慌てたせいか、背後にあった机や椅子にぶつかってしまい、ガタガタッと大きな音が教室中に響いた。




腰抜けたようにぺたりと床に座り込んだ私を、上半身を起こし、くしゃくしゃと髪を掻いた先輩が見下ろしている。



ばくばくと急に早くなった脈拍に、きっと真っ赤になっているであろう顔面。




あああ、違うんだ。いや、違くない。

まってくれ、いったいなにをしているんだ私は。