……ああ、なんか、泣きたくなってきた。
三琴先輩の彼女は私、三琴先輩が好きなのは私…って、何度もいい聞かせてきたはずなのに、ちょっとでも胸がざわつくとすぐに揺らいでしまう。
「てか、三琴くんあれでしょ、春の存在をその子で無理やり埋めてるとかでしょ」
その言葉が聞こえたとき、私は気づいたら個室の鍵を開けていた。
視線の先、振り返った春先輩と目が合う。
その隣にいたお友達さんは、『まずい』とでも言いたげに、見るからに焦った表情を浮かべていた。
「…すみません、聞くつもりはなくて」
「…あ、いや、…こちらこそ」
自分に自信が持てない。
春先輩と私じゃ、比べる対象にもならない。
わかっている。わかっていた。
そんなこと、最初からずっと痛いほど感じている。
だけど、それでも三琴先輩のことが好きだという揺るがない気持ちが、たまらなくくるしい。



