同情ではない。
ただ本当に、'当て馬'が辛いことを身を以て体験したからこそ、餃子を食べて元気が出るならと差し上げようと思っただけだ。
「当たり前に結ばれると思ってた幼馴染、転校生の見知らぬ女にとられちゃいました」
「うわ、まじか」
「頑張ったのに…っ、全然、見てくれなかった…っ!」
「え、ちょ、泣かないで。え、うん、けどわかる。俺も見知らぬ男にとられた」
「くそぉっ、ばかぁ、うあー…、」
三琴先輩のお友達さん、急に泣き出した私を見てちょっと引いてる。
隣に座るエナちゃん、「泣くな泣くな」と口の中に餃子を押し込んでくる。
3つ分の席を跨いだところに居た三琴先輩。
がたり、席を立った。
「つらいよなぁ…当て馬なんてくそくらえだっつの。な、ホント」
彼の親指でグイっと涙を拭われる。
突然のことに声も出なかった。



